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EXRAIL開発プロジェクトは、
工作機械メーカーへの地道なヒアリングから始まった。

植木雄亮

日本ベアリング株式会社
設計技術部

植木雄亮

2009年12月、日本ベアリングに入社。(勤続約7年半)約35年間、製品開発に携わる。日本ベアリング入社前はAV機器の機構ユニットの開発、デジタルカメラの設計等を行ってきた。日本ベアリング入社後6年間は、自社製リニアモータの開発に携わり、2015年から新製品ローラーガイドEXRAILの開発を担当。約2年5ヶ月の期間を経て製品化を実現する。技術者としての心構えは、「自分の発想を信じ、チャレンジする」こと。

新時代の要求に応えるべく開発したローラーガイド「EXRAIL」。その性能や特徴、開発ストーリー、さらに、内外で高く評価される日本ベアリングならではのモノづくりについて、EXRAIL開発プロジェクトチームのメンバーである弊社設計技術部・植木雄亮が語ります。

Q1 EXRAILを開発するきっかけは?

社長からの「NBの顔となるようなローラーガイド製品を世に出したい」という想いを受け、少人数のプロジェクトチームを編成してスタートしました。弊社は転動体としてボールを用いたガイド製品は扱っておりますが、ローラーを用いた、いわゆるローラーガイドと呼ばれる製品のラインナップはありませんでした。市場におけるこれら2種類のガイド製品の比率を見ると、ローラーガイドの割合が増えている傾向が続いていましたので、ローラーガイドの開発は重要でした。

Q2 EXRAIL開発にあたり最も重要視された事はなんでしょうか?

ローラーガイドは、市場を見ればすでに多くのメーカーの製品がある状況でした。その中で、後発メーカーとしてどのような製品を開発するのかを最大の課題と考えました。機械部品なので、たとえば何の変哲もないただのボルトのように、置き換えが利いて他の製品と遜色なければ良いと考えるのも一つの正解と言えると思います。しかし、EXRAILについては、他の製品と比較して明確に違いを打ち出し、指名して購入して頂ける製品を開発当初より目指していました。

Q3 他の製品と違いを出すといっても、方向性が色々あると思いますが、どのように検討されたのでしょうか?

まず、工作機械メーカーをターゲットとして考えることにしました。ローラーガイドのメインユーザーの一つでありながら、弊社製品を十分には売り込めていない分野とも考えられました。工作機械メーカー数十社を訪問し、ヒアリングをさせて頂いて、どのように差別化するべきか検討を進めました。

Q4 その結果、どのような差別化となったのでしょうか?

工作機械メーカーではガイド製品以外に、すべり案内を採用しているケースが多く見られました。その採用理由は、ガイド製品では剛性や減衰性が不足しているというものでした。また、加工面の品質を気にされているメーカーも多くありました。これらに着目し、「高剛性」、「高運動精度」、「高減衰性」について差別化した製品として開発を進めました。

Q5 その差別化を何により実現したのでしょうか?

ローラーの長さを長くすれば、ローラーと軌道面の接触剛性が高くなります。また、小さい径のローラーを多数用いて負荷を受けるローラーの数を多くすれば、転動体通過振動やウェービングと呼ばれる振動が低減され、運動精度が向上します。このような事から、長くて小径のローラー、すなわちニードルローラーを用いる事で、工作機械の性能にとって有益な違いが生まれ、差別化が実現すると考えました。

Q6 発売後、現在までの感触はいかがでしょうか?

工作機械は高額の商品ですので、その主要部品の一つであるガイド製品に対しては、当然ですが、慎重に見て頂いている印象です。正直なところお客様の必要とする検証データを十分に用意できていないと感じますし、差別化をしたことにより、より多くの検証データを求められているとも感じます。ありがたいことにテスト機で評価して頂けるお客様など、ご協力も頂いておりますので、少しずつでもデータを集めて行き、検討のテーブルにより多くあげて頂けるように努めて行きたいと考えております。

また、弊社では工作機械導入時にメーカーにお願いしてEXRAILを組み込んだ工作機械が何台か稼働しております。手前味噌ではありますが、これらの機械は加工面品質が滑り案内の機械と遜色ないと感じるなどオペレーターからの評判は良好です。特徴ある製品ですので、用途の向き不向きはあると思いますが、特徴を生かし、加工品質等の良い特性が得られ、お客様にこれからもより多くの評価を頂ける製品となっていく事に期待しています。

機能美は引き算から生まれる。
加えたのは先を行く技術のギャランティの証だけ。

渡辺弘明

株式会社プレーン
代表取締役

渡辺弘明

1960年福井県武生市生まれ。桑沢デザイン研究所リビングデザイン研究科卒業。(株)リコー、frogdesign japanを経て渡米、frogdesign california、zibaDESIGN勤務後1995年プレーン設立。30年間かたくなにプロダクトデザインに従事、ミニマルな造形を追求する。国内外50社以上、情報 機器、事務機器、音響機器、光学機器、医療機器、文具、雑貨等あらゆる分野の製品を手がける。2011年minimalifeを設立。製品企画から販売、 ブランディングに至るまで商品づくり全てに関わる。グッドデザイン賞、iF design award、Red Dot Awardなど受賞作品多数。2007年よりグッドデザイン賞審査委員。

数々の有名メーカーの製品開発に携わり、2代目以降のMacintoshのデザインで有名な米国フロッグデザインにも所属経験を持つ株式会社プレーンの代表取締役 渡辺弘明氏にEXRAILのデザインについて伺った。

Q1 EXRAILのデザインに携わったきっかけは?

日本ベアリングさんからプロダクトデザイナーを探しているとお話を受けたのがきっかけです。機械部品はデザインしたことはありませんが、ベアリングに限らずネジや歯車などプリミティブな物をコレクションしたこともあり以前から興味はありました。ベアリングはデザイナーが手を入れなくても非常に綺麗なプロダクトで、そういった物を見る度にその精緻さに感動を覚え、私の理念に近いプロダクトであり、機会があればデザインしてみたいと思っていました。

Q2 渡辺さんが考えるデザインのポリシーとは?

デザインは「装飾」という風に捉える人が多いですが、私はそうは思わなくてむしろ不必要なものをどんどん剥ぎ取っていく、何が重要なのか、何が必要なのかといったコンセプトだけ残して、それ以外はどんどん削ぎ取っていくことだと考えています。

Q3 はじめて製品を見たときの第一印象は?

特にデザイナーが手を入れる必要がないほど、非常に完成度が高い製品だと思いました。多少面を整理するぐらいで、あとは手をかけなくても強いポイントになるのは何かと考えました。ただ、日本ベアリングさんは外のデザイナーに依頼するのは初めてのこととお聞きし、デザイン=装飾と考えている会社であればうちは必要ないと思っていました。

渡辺弘明

Q4 EXRAILのデザイン開発にあたっての留意点は?

繰り返しになりますが、私がデザインをする以前からかなり完成度の高いものでした。ただ、この製品の素晴らしさをいかに伝えるかということは重要だと思いました。EXRAILに関しては他社製品に比べて非常に優れている面があります。内蔵されているニードルローラーによって性能を上げているのですが、内蔵されていて外から見えるものではないので、その性能をどう表現するか、日本ベアリングというブランドを如何に表現するかということを考えました。

Q5 EXRAILのデザイン・コンセプトとは?

日本ベアリングさんのコーポレートアイデンティティに、オレンジ、グリーン、ブルーの3色が使われています。オレンジには「活力」という意味合いがあり、シルバーと黒の筺体に一番インパクトがあるオレンジの「NB」ブランド・バッジをつけました。EXRAILは非常に高い性能が内蔵されていますが表面的には見えません。でも、日本ベアリングのエンジニアや製造に関わる方々は相当な誇りをもって作られていると思います。そういった誇りを表現したいと考えたのがこのオレンジのブランド・バッジで、それは同時に提供価値を約束する「品質の証」になります。このバッジがついていることで、作り手も、使い手も、すべてが誇りを持って使えるという証です。

Q6 製品化に向けて気を配った点は?

デザインが性能に悪影響を与えることはあってはいけないので、内部の作り方を考慮しながら考えて、バッジは後から付け足すのではなくパーツとパーツの間に挟み込むような形で提案しました。そうすることによって使っている間に外れることもありません。バッジは3面をとったL字型で、光の当たる加減で立体的に認識しやすく、対角線上の角の2箇所につけることで、どこからでも見えるようにしました。エンジニアの方が相当な年月を費やし、誇りを持って完成させたものです。だからフィニッシュとしてしっかり仕上げないと、という使命感を持って取組みました。

Q7 今回、日本ベアリングとお仕事をしていかがでしたか?

エンジニアの方の理解度が高く、コミュニケーションはうまく運びました。どのように作るかなどこちらの想いとほとんど差異がありませんでした。はじめてのクライアントさんとは行き違いもあるのですが、実現するのに難しくても、「やってみたい、チャレンジしたい」とお客様に言わせるように心がけています。